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第1回

第1回 「はじめに」

平成28年11月1日更新

 私は40年近く肺がんを含む呼吸器の診療に携わってきました。
そして、この2年間は肺がんの末期患者さんの緩和病棟長でした。緩和病棟医に適した医師は、端的に言えばお坊さんと医者をミックスしたような感性がなくてはならないとかねてから感じています。というのは、治療を行うだけでは無く、患者さんに寄り添うような、感覚が大切だからです。
ちなみに私が生まれた時、両親共に活動性の結核で私の出産を危ぶまれましたが、運よく出生してすぐ叔母の嫁ぎ先のお寺に預けられ、4歳までお坊さんの修行をさせられたと聞いています。幸いに両親の結核がストマイで治ったので親の手元に戻ったが、ひょっとするとお坊さんになっていたかもしれません。
さて、がんで死亡する日本人は3人に1人、がんにかかる人は2人に1人です。したがって、当院の緩和病棟はいつも満床でした。緩和病棟勤務時は極力明るくしていたがいつも医者としてがんへの敗北感の日々でした。
そんな緩和病棟長を医師兼お坊様のつもりで日夜頑張りました。そして、緩和病棟から最先端医療のがん免疫治療担当医に専任することとしました。幸い当院は国家戦略特区に認定され、再生医療のがん免疫療法が厚労省にて許可されているので、昔にパリ大学や防衛医大、東京医大で勉強したことが役に立ちました。

   「がんって何ですか?」 「なぜできるのか?」 「がんのどこが怖いの?」
がんは相当進行していなければ痛くありません。がんがあっても苦痛はなく日常生活には何も支障がない場合が珍しくありません。なぜかといえば、がん細胞そのものは痛みや苦痛を出す細胞ではないからです。
では、がん細胞の何が生体に悪さをするのでしょうか?それは、役に立たないがん細胞がいつまでも増え続け、がん細胞が発生した場所から別の臓器に転移するからです。
人間はたつた1個の受精卵として始まってから赤ちゃんから大人に成長し、死亡するまでの間に無限に近い細胞分裂を繰り返します。しかし、がんの場合は古い細胞が死滅するのを待たずに、間違った細胞が増え続ける。間違った細胞が増え続けると、間違った細胞が集り、塊を作り、腫瘍を作ります。

 今回、当院ではがん免疫療法の「樹状細胞ワクチン療法」を実施します。
樹状細胞(Dendritic cell:略DC)は人間の健康の要です。
樹状細胞の発見は2011年ノーベル生理学・医学賞のライフ・スタインマン博士(Ralph Marvin Steinman)です。私が1980年頃に4年間パリ大学に留学していたとき、よくパスツール研究所に講演、協同研究で来仏していた彼によくお会いしました。見てくれはコロンボ刑事に似ていて、どこかのおじさんという感じでありました。そして、大変気さくに教えていただいたことを今更のように思い出します。

drralphラルフ・マーヴィン・スタインマン(Ralph Marvin Steinma)博士

 さて、樹状細胞は免疫機能をコントロールする指令塔の役割をする細胞です。したがって、樹状細胞の働き次第で私たちの免疫機能が決定します。そのため、病気を予防し健康になるためには、樹状細胞の働きが低下するのを防ぎ、生活習慣を改善し機能を高めるのです。つまり、樹状細胞を活性化するためのしっかりした食事を取り、自分に適した運動と身体をストレスフリーにすること、そのことが加齢に伴う老化を防げるのです。
免疫機能を上げるのに重要なのはライフスタイルを改善することです。食生活を変え、運動を実践し、心理としては他者を批判する等の不健康な思考パターンをドロップオフすることです。

がんを克服するためには樹状細胞を増やすことです。そして、樹状細胞の免疫機能を上げることです。
がん細胞のことを考えてみてください。ウイルスや細菌と違い、他所からきた侵略者ではありません。それは、自分の一部であり、免疫機能のプログラムが不調になっただけです。
がん患者さんの制限している多くのブリーフ(信念)を変えるようにして、生活変化に耐えるようにすることです。そのことにより、樹状細胞が活性化してがん細胞を壊してくれるのです。
がん免疫療法はそんな樹状細胞を活性化させがんを治す治療法です。副作用がほとんど無いがん免疫療法を試みてはどうですか!