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第2回

第2回 「免疫力と食事習慣」

平成28年12月2日更新

 我が病院の7階レストランからの夜景は、都心のミシュラン三ツ星レストラン並みであり、羽田空港を眼下に見つめ東京タワーとスカイツリーを含めて180度眺められます。そこでのエッセン(ドイツ語で食事、古い医者が使う言葉)は格別であり、体に悪いと知りながらも食べ過ぎてしまいます。

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7Fレストランからの景観(富士山、羽田空港)

 ところで世界の100歳以上の長寿者が局地的に多い地域{ブルーゾーン}をご存知でしょうか?2010年ダン・ビュイトナーによりブルーゾーン※1が紹介され、ベストセラーとなりました。
   ①日本 沖縄(近年沖縄は平均寿命が低下し、沖縄クライシスと言われています。)
   ②イタリア サルデーニャ島のバルバキア地方
   ③アメリカ カリフォルニア州のロマリンダ
   ④中米コスタリカ ニコジャ半島
 以上の4カ所がブルーゾーンと呼ばれる地域です。これら4つの地域は文化も歴史も違います。しかし、なぜこれらの地域が長寿なのか。その方程式を解きますと、健康の要である『免疫力を高めること』を自然に日常生活に取り込こんだ数千年にわたり培われた知恵なのです。
ブルーゾーンの研究で、ダン・ビュイトナー博士は9つのルールを述べておりますが、食事関係については以下の3つがありました。
   ①腹八分目で摂取カロリーを抑える。
   ②植物性食品を食べる。
   ③適度に蒸留酒『ワイン、ビール、等』を飲む。
 『免疫力』を上げて健康を維持するには「食」が最も重要なファクターです。
 ちなみに「ブルーゾーン」の9つのルールとは前記の①②③以外に
   ④適度な運動を続ける。
   ⑤はっきりした目的を持つ。
   ⑥人生をスローダウンする。
   ⑦信仰心を持つ。
   ⑧家族を最優先にする。
   ⑨人とつながる。
です。

 さて、日々の食事習慣は、がんの治療にどれほど効果があるのでしょうか?
 懐疑的でしょうが、免疫療法と同じで副作用に苦しむ事はありませんので、良い食事習慣は積極的に取り入れることをお勧めします。
 もちろん、食べすぎ、飲みすぎはよくありません。普通に楽しむ程度は全く問題ありません。制限したほうがよいのは糖質です。がん細胞は糖質をエネルギーにしています。また砂糖を消化するとき、免疫力維持に欠かせないビタミン、ミネラルを大量に消費します。そのため、糖質の過剰摂取はがん細胞を食べる樹状細胞を活性化するのに必要なビタミンやミネラルの欠乏を招いてしまうのです。そのため、できるだけ糖質を減らすことを習慣づけることが重要です。
 しかし、ここでひとこと。極端にカロリー制限をするのはお勧めできません。
 小食になるとがん細胞でなく、正常な細胞の働きも落ちてしまいます。がん患者さんが末期に一気にやせこけるのは、増殖しすぎて食料の足りなくなったがん細胞が全身の脂肪や筋肉からカロリー等を略奪するからです。したがって、がんの進行を抑えるには糖質制限をお勧めします。私はお世話になった看護師のナースステーションへいつもアイスクリームを差し入れていましたが、本日からは別なものにしようと思います。

 さて、がん免疫療法とは、ひとことで言うと「免疫の力によってがん細胞をやっつける治療法」でありますが、医学的に言うと「がん細胞を認識して、攻撃する免疫細胞や免疫制御物質を体内で誘導し、それらを利用してがん細胞の殺傷や増殖阻害を目指す治療法」です。
 健康な人でも毎日数百~数千個ものがん細胞ができていると言われています。しかし、人には免疫という機能が備わっています。免疫機能が正常に機能している人はがん細胞が発生しても、免疫機能が消滅させ、増殖するのを抑えているのです。その免疫機能とは、主に血液中にある白血球の一種であるリンパ球のことを指します。このリンパ球が体の中を常にパトロールして、がん細胞を見つけて攻撃し、がん細胞の増殖を阻止するのです。ところが免疫システムがあまり機能しなくなると、リンパ球ががん細胞を見逃してしまい、毎日発生するがん細胞の中で生き残りができ、それが長い年月で大きな塊になり、がん腫瘍になるのです。
 つまり免疫力が低下し、その状態が長く続いた時に、がんが発症するのです。ですから、免疫力を低下する生活習慣やストレスを避けて、いつも免疫力を上げる体質改善を心がけることこそ、がん予防になるのです。

 多くの人が、がんに対する正しい知識に乏しく、がんになるとショックを受け、うつ状態になる人もいます。それががんの状態を悪化させることにもつながります。がんに関して原因を知り、恐れることなく対応することが重要です。怖がったり、恐れたりすると免疫力を弱め、病気にとらわれてしまうのです。がんにとらわれない生活習慣を心がけましょう。

 今回お話した生活習慣のなかで食事習慣は明日からでも変えることができます。運動や睡眠はもちろん大切ですが、最も重要なのは「食」なのです!

文献
※1:ダン・ビュイトナー 「ブルーゾーン」2010年12月25日発行 中央精版印刷