044-277-5511

文字の大きさ

心血管治療センター

狭心症・心筋梗塞と心臓カテーテル検査・治療

1

1.心臓カテーテル治療が必要になる患者様とは?

▶心臓の筋肉への血流が低下することにより、胸痛などの症状が起きたり、無症状であっても、心臓の機能が低下したり、もしくはその危険がある患者様

胸の痛み,締め付け,ドキドキ,動悸,息切れ
3

心臓は血液を送り出すことによって全身に酸素や栄養を送るポンプの機能を果たします。心臓のポンプ機能を担う筋肉(心筋)に血液を送っている血管を「冠動脈」と言います。糖尿病や脂質異常症、高血圧、喫煙、加齢などの動脈硬化を進める因子により、冠動脈の壁の内側にコレステロールなどの脂質がたまること(プラーク形成)により狭心症を発症したり、血液のドロドロ(血栓)が湧くことにより心筋梗塞を発症したりします。これらの原因によって血流が低下し心筋にダメージをもたらしたり、胸が痛い、息切れがする、ドキドキするなどといった症状を引き起こしたりします。また最悪の場合、最初の発作で不整脈を合併し、突然お亡くなりになってしまうこともあります。

これらのご病状は一般的な健康診断で必ずしも発見されないことがあり、診断のためには心臓CTや冠動脈造影などの精密検査をお受け頂く必要があります。ご病状を明らかにするとともに、リスクを評価して治療方針を決め、必要に応じて、血流を改善する治療が必要になります。

心臓の構造と動脈硬化

2.心臓カテーテル検査・治療の概要

▶カテーテルという細い管を主に手首または鼠径部の動脈から挿入し、心臓の血管で狭くなったり、詰まったりしている部分がないかを造影剤を用いて確認します。冠動脈の細くなった場所(狭窄)や詰まった場所(閉塞)を認めれば、そこを拡げて血流を改善させる治療を行います。

カテーテル
カテーテルの構造

カテーテルは直径数mm、⻑さ1m程度の細⻑い管です。局所麻酔をした後に手首または鼠径部の動脈にシースと呼ばれる鞘(さや)を入れ、カテーテルを血管伝いに挿入し、心臓までもっていきます。造影剤を用いて、冠動脈の細くなった場所(狭窄)や詰まった場所(閉塞)があるかどうかを確認します。必要に応じて血管内の圧を測定することでカテーテル治療が必要かを判断します。

カテーテル検査で冠動脈の狭窄や閉塞を認める場合、冠動脈の中に細いワイヤーを通した後に、超音波を用いて血管壁に溜まったプラークを評価し、カテーテルの管を通して風船で狭窄を拡げ、ステントと呼ばれるメッシュ状の金属を用いて、再度狭窄・閉塞しないように、血流を改善させる治療を行います。

狭心症,心筋梗塞,ステント治療

検査だけで終了する場合は30分程度、治療まで行う場合には1時間〜1時間半程度の時間を要します。手首からカテーテル検査・治療を行った後は、手首に止血用のバンドを数時間つけて止血いたします。鼠径部からカテーテル検査・治療を行った後は、穿刺部を4〜6時間程度圧迫して止血いたします。
多くの患者様ではカテーテル当日の朝に来院していただき、入院日当日にカテーテル検査・治療を行い、1泊2日で対応いたします。ただし腎機能が低下している患者様の場合には、造影剤による腎機能障害を防ぐために2泊3日の入院をお願いする場合がございます。 なお、不安の強い患者様には検査・治療の際に気持ちが落ち着くお薬を適宜使用いたします。
血管が硬く詰まっている場合は、ロータブレーターという装置を用いて動脈硬化を削る場合があります。また3本ある冠動脈のうち3本とも詰まっている場合や、左冠動脈の根本が細くなっている場合には心臓バイパス手術の方が適していることがあります。そのような場合には、心臓血管外科医を含む当院ハートチームで相談したうえで患者様の治療に対応いたします。

3.心臓カテーテル治療の効果

▶胸が苦しくなるなどの症状が消失したり、心臓の機能が改善したりします。

カテーテル治療により冠動脈の血流が改善すると、心筋へ血流が行き渡るようになります。これにより胸が苦しくなったり、ドキドキしたりする症状が改善します。また、冠動脈の血流は心臓の機能を成り立たせるために大切であり、心臓の機能が低下している患者様の場合、心臓の機能の改善が期待されます。

8

4.心臓カテーテル治療の成績

9

▶カテーテル治療自体の初期成功率は95%以上で、⻑期のステント開存成績も90%程度と良好です。

カテーテル治療の初期成功率は95%以上です。血液をサラサラにするお薬(抗血小板薬)や糖尿病、脂質異常症、高血圧の管理を加えることで、90%以上の患者様は数年以上、再治療が不要になります。ただしお薬を中断すると、一度拡げた血管が再び血栓などで詰まってしまうことがありますので、治療後も必ず通院を継続し、内服治療を継続するようにしてください。

5.心臓カテーテル治療の合併症

▶患者様のご病気の背景などにより造影剤やカテーテル使用に伴う合併症が起こる可能性があります。
命の危険があるような合併症は1000人に1人程度の低い確率です。

比較的頻度の高い合併症:
□ 穿刺部の皮下出血や血腫
 ※多くは数日〜数週間で改善します。

頻度の低い合併症:
□ 造影剤の使用に関連した強いアレルギー反応
 (アナフィラキシー 例:皮疹、嘔気、呼吸困難)
□ 造影剤による腎機能悪化(重症時は透析が必要)
□ 冠動脈からの出血(心タンポナーデ)
□ 致死的不整脈(突然死のリスク)
□ 脳梗塞を含めた血栓症の合併
□ 神経損傷(麻痺、痺れ)
□ 放射線による皮膚障害
□ その他、想定し得ないような合併症

10

6.カテーテル治療の費用

▶カテーテル治療に伴う医療費の負担は高額療養費制度を利用されることにより大まかに以下の表の限度額になります。年齢や所得、治療期間、回数、医療保険の種類、生活保護受給などにより上下する可能性があります。

カテーテル治療,費用

7.最後に

患者様ごとに人生観や価値観は異なり、ご病気の状態もまたそれぞれです。担当医から詳しい説明を受け、よく相談しながら、個々の患者様における最良・最適の治療を選択されることが大切です。