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人生の最終段階における適切な意思決定支援に関する指針

当院における適切な意思決定支援に関する指針

令和2年4月1日
医療法人社団 葵会 西多摩病院

人生の最終段階を迎えた患者及び家族と医師をはじめとする医療従事者が、最善の医療・ケアを作り上げていくため、患者・家族等に対し適切な説明と話し合いを行い、患者本人の意思決定を基本とし、医療・ケアを進めるものとする。

「人生の最終段階」の定義

  • がんの末期のように、予後が数日から長くとも2~3ヶ月と予測が出来る場合
  • 慢性疾患の急性増悪を繰り返し予後不良に陥る場合
  • 脳血管疾患の後遺症や老衰など数ヶ月から数年にかけ死を迎える場合

なお、どのような状態が人生の最終段階かは、患者の状態を踏まえて、多職種にて構成される医療・ケアチームにて判断するものとする。

1.人生の最終段階における医療及びケアの在り方

  1. 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療を進めることが最も重要な原則である。
  2. 人生の最終段階における医療における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止等は多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチーム(注釈1)によって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである。
  3. 医療・ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者・家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアを行うことが必要である。
  4. 生命を短縮させる意図をもつ医療行為は、本指針では対象としない。

2.人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続

人生の最終段階における医療及びケアの方針決定は次によるものとする。

(1)患者の意思の確認ができる場合

  1. 専門的な医学的検討を踏まえたうえでインフォームド・コンセントに基づく患者の意思決定を基本とし、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームとして行う
  2. 治療方針の決定に際し、患者と医療従事者とが十分な話し合いを行い、患者が意思決定を行い、その合意内容を文書にまとめてカルテに保存する。(参考)
    上記の場合は、時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じて、また患者の意思が変化するものであることに留意して、その都度説明し患者の意思の再確認を行うことが必要である。
  3. このプロセスにおいて、患者が拒まない限り、決定内容を家族にも知らせることが望ましい

(2)患者の意思の確認ができない場合

患者の意思確認ができない場合には次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。

  1. 家族等が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
  2. 家族等が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて家族等と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
  3. 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。

(3)多職種及び複数の専門家からなる委員会の設置

上記(1)及び(2)の場合において、治療方針の決定に際し、

  1. 医療・ケアチームの中で、病態等により医療内容の決定が困難な場合
  2. 患者と医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合
  3. 家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合等については、医療相談室までご相談ください。

(注釈1):医療・ケアチームとは、主治医、看護師、医療相談員等の医療従事者

人生の最終段階における医療に対する希望調査票について

この希望調査票は対象となる患者にとって、その時点で最もふさわしい医療ケアを患者あるいは家族等と供に考え、緩和的アプローチを含めて提供することを意味する。入院時に患者、家族等には十分な説明と意思確認を行い、希望調査票に必要事項を記入してもらいカルテに保存する。

補足)人生の最終段階における医療に対する希望調査票の解説

積極的な延命治療を行わないことによって心肺蘇生以外の他の治療に対しても消極的になり、生命維持治療も制限されてしまい、実質的に延命治療の差し控え・中止となっている場合があります。そこで心肺蘇生以外の他の医療処置内容についても、具体的に十分な考慮が必要であるという趣旨のもとに、この調査票を使用します。

参考)人生の最終段階おける診療録記載に当たっては、以下の事項を含むことが求められる。

(1)医学的な検討とその説明

  • 人生の最終段階であることを記載する。
  • 説明の対象が患者本人の場合、本人の意思、またはリビングウィルの有無を記載する。本人以外の場合、本人との関係を記載する。
  • 患者が終末期であることについて、本人あるいは家族等に説明した内容を記載する。
  • 説明に際して、本人あるいは家族等による理解や受容の状態を記載する。

(2)人生の最終段階における対応について

  • 患者の意思(またはリビングウィル)の内容を記載する。
  • 患者が意思を表明できない場合、家族等による本人の推定意思を記載する。
  • 家族等の意思を記載する。
  • 患者にとって、最善の治療方針について検討事項を記載する。
  • 医療チームのメンバーを記載する。

(3)状況および対応が変化した場合、その変更について記載する