前立腺SBRT

前立腺がんに対する5回照射SBRT(定位放射線治療)
~ハイドロゲルスペーサー × 金マーカー併用による高精度治療~

前立腺がんに対する放射線治療は、長い歴史を有する標準的な治療法の一つです。近年では、短期間で高い治療効果が期待できるSBRT(定位放射線治療)が国際的に普及しており、患者さんの身体的・社会的負担が大きく軽減できる治療法として注目されています。

SBRTによる治療効果の期待

5回で完結するSBRT

SBRTは、画像誘導技術と高精度な放射線照射技術を組み合わせ、前立腺にピンポイントで高線量の放射線を照射する治療法です。

  • 治療回数:5回
  • 治療期間:10日前後(隔日照射)
  • 1回線量:7.25〜8 Gy(悪性度に応じて設定)

従来、7〜8週間を要していた治療(1回あたり約1.8〜2 Gyの線量で35〜40回の照射)を、約10日間に短縮することが可能です。

SBRTが前立腺がんに適している理由

比較的進行の遅い前立腺がんは、放射線に対する「α/β比」が低く(一般的な悪性腫瘍では約10 Gyであるのに対し、前立腺がんでは約1.5 Gy)、少ない回数で高線量を照射する治療が理論的に有利とされています。

当院で行っている7.25 Gy×5回(総線量36.25 Gy)の治療は、2 Gy換算で約91 Gyに相当し、従来の78 Gy(2 Gy×38回)と比較して、より高い治療強度が得られます。一方で、正常組織への線量は2 Gy換算で約74 Gyに抑えられます。

正常組織への影響を抑える工夫

SBRTでは高線量を照射するため、安全性を確保する技術が不可欠です。当院では以下の2つを標準で併用しています。

ハイドロゲルスペーサー(SpaceOAR™)による直腸保護

前立腺の後方には直腸が位置しているため、放射線治療においては直腸への影響が課題となります。ハイドロゲルスペーサーは、前立腺と直腸の間にゲル状の物質を注入し、数mmから1 cm程度の空間を確保する技術です。これにより、直腸の副作用リスクを低減しつつ、前立腺に十分な線量を投与することが可能となります。

当院では、提携する泌尿器科と連携し、Boston Scientific社のSpaceOAR™を留置しています。

SpaceOAR™留置前後のMRI画像
SpaceOAR™留置前後のMRI画像
Boston Scientific社Webページより加筆・転載)
前立腺がんSBRTの治療計画における線量分布
前立腺がんSBRTの治療計画における線量分布
(ハイドロゲルスペーサーにより、直腸前壁の線量は照射線量の約50%程度まで低減)

金マーカーを用いた前立腺の追跡

前立腺は、呼吸や腸管の動き、膀胱の充満などにより、わずかに位置が変動する臓器です。ExacTrac Dynamicシステムでは、あらかじめ前立腺内に留置した金マーカーを目印として治療中に追跡し、サブミリ単位での位置ずれを補正しながら照射を行うことが可能です。

当院では、一般的に用いられる5〜10 mmのマージンと比較して、より小さい3 mmのマージンで治療を行っています。これにより、周囲の正常組織への不要な被ばくを大幅に低減することが可能です。

ExacTrac Dynamicシステムによる前立腺追跡の例
ExacTrac Dynamicシステムによる前立腺追跡の例
(照射開始から終了までの間、前立腺の3次元的な位置ずれを確認)

前立腺がんSBRTの診察から治療の流れ

初診および説明
ハイドロゲルスペーサー・金マーカー留置(提携泌尿器科)
治療計画用CTおよびMRI撮影
SBRT(隔日5回照射)
治療後経過観察

※治療前には、排便調整・蓄尿などの協力をお願いする場合があります。

副作用について

SBRTは高精度技術により安全性が高い治療ですが、以下のような副作用が起こることがあります。

  • 頻尿・排尿時違和感
  • 軟便・軽度の出血
  • 性機能への影響

多くは軽度で一時的ですが、まれに長期的に続く場合があります。当院では治療後も継続的に経過を確認します。

費用について(保険診療)

2026年6月の診療報酬改定により、照射回数に関わらず費用が一定になりました。

  • SBRT(5回):63万円
  • 中等度寡分割(20回):96.5万円
  • 高額療養費制度により自己負担は軽減されます

※スペーサー・金マーカー留置は保険診療内で別途費用が必要です。

まとめ

前立腺がんに対するSBRTは、

  • 短期間で治療が完了する
  • 高い治療効果が期待できる
  • 身体的・社会的負担が少ない
  • 直腸保護・位置補正技術により安全性が高い

という利点を持つ、現代の放射線治療における重要な選択肢です。

患者さん一人ひとりに合わせて最適な治療法をご提案いたします。

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