~高精度放射線治療装置 Novalis Edge(ノバリス・エッジ)のご紹介~
当院では、2009年より使用してきた Novalis Tx(バリアン社/ブレインラボ社)に代わり、2025年12月に新型放射線治療装置「Novalis Edge(ノバリス・エッジ)」を導入しました。
Novalis Edge(正式名称:Novalis powered by TrueBeam Edge HyperSight)は、バリアン社製の高精度リニアック「TrueBeam Edge HyperSight」と、ブレインラボ社製の定位放射線治療用画像誘導システム「Novalis Radiosurgery System」を組み合わせた放射線治療装置です。
腫瘍の位置を高精度に確認しながら、強度変調放射線治療(IMRT)、強度変調回転照射(VMAT)、定位放射線治療(SRS/SRT)などの高精度放射線治療を行うことができます。
TrueBeam Edge HyperSightとは
TrueBeam Edge HyperSight は、高精度な画像誘導や照射制御を活用し、病変に応じた放射線治療を行うための放射線治療装置(医療用リニアック)です。精密な治療計画に基づき、照射範囲や線量分布を適切に設定することで、周囲の正常組織への影響を可能な限り抑えた治療を目指します。
また、正確な線量を短時間で照射できるため、患者さんの時間的負担の軽減にもつながります。
【主な構成装置】
高精度リニアック本体(TrueBeam Edge)
高精度な放射線照射を行うための医療用直線加速器です。高い機械精度と高速な照射制御により、病変の形状に応じた線量分布の形成が可能です。
また、高線量率モードでは、6 MV X線で1,400 MU/分、10 MV X線で2,400 MU/分(通常照射モードでは600 MU/分)といった高速照射が可能であり、特に照射時間が長くなる定位放射線治療に有効です。
さらに、ロールやピッチ方向の補正が可能な PerfectPitch(6軸補正治療寝台)を搭載しており、患者さんの体位を高精度に補正することができます。
多分割コリメータ(HD120 MLC)
HD120 MLC(High-Definition Multi-Leaf Collimator)は、放射線の形状を細かく制御するための多分割コリメータです。腫瘍の形状に合わせた高精度な照射野の形成に寄与します。
コリメータ1枚あたりの幅はアイソセンタ(中心)で2.5 mmと非常に薄く、直径数 mm の転移性腫瘍に対してもピンポイントでの照射が可能です。
高精細CBCT(HyperSight)
HyperSight は、高画質かつ高速撮影に対応した画期的なCBCT(コーンビームCT)機能です。治療直前に患者さんの体内位置を三次元的に確認し、照射位置の再現性向上を図ります。
検出器の改良により、従来のCBCTと比較して撮影時間が短縮されるとともに、画質も大きく向上しました。これにより、高精度な位置合わせを短時間で行うことが可能です。
また、CT値(CT画像の各画素が持つ信号値)の精度が向上したことで、CBCT画像を利用した再治療計画が可能となりました。腫瘍の大きさや体内臓器の変化に応じて治療計画を適宜見直す治療法は、適応放射線治療(Adaptive Radiotherapy:ART)と呼ばれます。
呼吸監視システム(RGSC)
RGSC(Real-time Position Management Respiratory Gating System)は、放射線治療中の患者さんの呼吸による体内の腫瘍や臓器の動きを監視し、より正確なタイミングで放射線を照射するためのシステムです。胸部や腹部の腫瘍は呼吸に伴って位置が動くことがありますが、RGSCでは患者さんの胸部または腹部に設置したマーカーの動きを赤外線カメラで検出し、呼吸状態をリアルタイムで把握します。また、診断CTでは4次元CT(4DCT)を撮影することで、呼吸に伴う腫瘍の動きを動画として確認することができます。
この情報を利用して、呼吸の特定のタイミングに合わせて放射線を照射する呼吸同期照射を行うことができます。腫瘍の動きが小さく安定した呼吸のタイミングで照射することで、より正確な治療が可能になり、周囲の正常組織への影響を抑えることができます。
また、RGSCは呼吸停止照射にも利用されます。これは、患者さんが一定の呼吸状態で息を止めている間に放射線を照射する方法で、特に呼吸によって腫瘍が動きやすい胸部や腹部領域の放射線治療に有効です。システムが呼吸状態を監視しているため、設定した範囲から外れた場合には自動的に照射が停止し、安全に治療を行うことができます。
定位放射線治療専用アプリケーション(HyperArc)
HyperArc(ハイパーアーク)は、多発性脳腫瘍に対する高精度な定位放射線治療(SRS/SRT)を、自動化されたワークフローにより短時間かつ安全に実施するシステムです。TrueBeam Edgeに搭載されており、自動化された照射プロセスによって、短時間で高精度な治療を行うことが可能です。
ノンコプラナー(非共面)照射と専用アルゴリズムを用いることで、腫瘍に高い線量を集中させながら、周囲の正常な脳組織への線量を低減し、治療後の有害事象(認知機能低下や脳壊死)のリスク軽減を目指します。
また、複数個(10~20個以上も可能)の腫瘍を一度に治療することができ、治療時間の大幅な短縮が期待されます。さらに、VMATの技術を用いることで、複雑な形状の腫瘍に対しても高精度な治療が可能です。
Novalis Radiosurgery System は、高精度な脳定位放射線治療(SRS/SRT)および体幹部定位放射線治療(SBRT)に対応した画像誘導放射線治療(IGRT)システムです。高度な画像誘導技術と高精度な位置制御により、腫瘍に高線量を集中的に照射しながら、正常組織への影響を可能な限り抑えた治療を実現します。
脳腫瘍から体幹部腫瘍まで幅広い臨床領域に対応し、患者様さんにとって負担の少ない放射線治療の提供を目指しています。
ステレオX線画像誘導システム(ExacTrac Dynamic)
ExacTrac Dynamic は、2台のX線装置により骨構造などの内部解剖情報を撮影し、治療計画画像と高速に照合することで、サブミリメートルレベルの高精度な患者位置合わせを可能にします。特に、高精度な脳定位放射線治療(SRS/SRT)の実施において有効です。
また、光学技術とサーモグラフィを用いた熱監視システムにより、患者さんの体表面を三次元的に認識し、治療中の体動をリアルタイムで監視します。患者さんの位置が設定された許容範囲から外れた場合には、自動的に照射を停止し、再位置合わせを行うことが可能です。
SGRT体表面誘導放射線治療システム(ExacTrac Dynamic Surface)
SGRT(Surface Guided Radiation Therapy)は、患者さんの体表面をカメラで三次元的に取得し、その形状を基準データ(治療計画CTから生成された体表面)と比較することで、患者さんの位置ずれを非接触で高精度に検出する技術です。
ExacTrac Dynamic Surface では、3Dステレオカメラ、構造化光、赤外線サーマルカメラなどを用いて体表面をリアルタイムにスキャンし、数十万点に及ぶ三次元表面データを取得します。これにより、体表面の形状と温度情報を組み合わせた高精度な位置追跡が可能となります。
さらに、X線画像による内部構造の確認を組み合わせることで、骨構造などの内部位置情報を含めた精密な位置合わせが可能です。これにより、従来の皮膚マークを使用しない治療が可能となり、特に乳房温存照射において患者さんの精神的負担の軽減に貢献します。
深吸気息止め照射(DIBH)
DIBH(Deep Inspiration Breath Hold)は、放射線治療の際に大きく息を吸い、一定時間呼吸を止めた状態で照射を行う方法です。特に左乳房照射などで用いられ、深く吸気することで肺が膨らみ、心臓が胸壁から離れるため、心臓への放射線量を低減できるという原理に基づいています。
ExacTrac Dynamic では、可動式の天吊り室内モニターを用いた患者フィードバックシステムにより、息止めの目標レベルをガイド付きナビゲーションで分かりやすく表示することができ、患者さんが適切な呼吸停止を維持できるよう支援します。
前立腺マーカートラッキング
ExacTrac Dynamic のマーカートラッキングは、前立腺の放射線治療において、前立腺内にあらかじめ留置した小さな金属マーカーを目印として位置を確認する技術です。前立腺は膀胱や直腸の状態によってわずかに動くことがあるため、治療のたびに正確な位置を確認することが重要です。
ExacTrac Dynamic では、治療前に2方向からX線撮影を行い、金属マーカーの位置を治療計画時の位置と比較することで、前立腺のずれを高精度に確認します。その結果に応じて患者さんの位置を細かく調整することで、前立腺により正確に放射線を照射し、周囲の正常組織への影響を可能な限り抑えた治療を目指します。
多発性脳転移SRS専用アプリケーション(Elements Multiple Brain Mets SRS)
Elements Multiple Brain Mets SRS は、複数の脳転移に対する定位放射線治療(SRS)の治療計画を効率的に作成するためのソフトウェアです。脳内に複数存在する転移性腫瘍に対して、それぞれの病変を正確に捉えながら放射線を集中させる治療計画を、自動化・最適化することができます。
本ソフトウェアでは、MRIやCT画像をもとに病変の位置や形状を解析し、複数の腫瘍に対して同時に高精度な照射計画を作成することが可能です。これにより、腫瘍には十分な線量を届けながら、周囲の正常脳組織への影響を可能な限り抑えた治療を目指します。
また、治療計画作成の効率化により、患者さんの治療準備にかかる時間の短縮にもつながります。このように、Elements Multiple Brain Mets SRS は、複数の脳転移に対して安全性と精度の高い定位放射線治療を実施するための治療計画支援システムです。
再治療計画専用ソフトウェア(Elements Retreatment)
Elements Retreatment は、過去に放射線治療を受けた部位に対して再度治療を行う際に、安全に治療計画を作成するための支援ソフトウェアです。放射線治療では、一度照射した臓器や正常組織にどの程度の線量が既に与えられているかを考慮することが非常に重要です。
Elements Retreatment では、過去の治療計画データと現在の画像データを統合し、以前の照射で受けた線量分布を現在の治療計画に重ねて評価することができます。これにより、正常組織に蓄積される放射線量を確認しながら、新たな治療計画を作成することが可能です。
この機能により、再照射が必要となる症例においても、安全性に配慮しながら適切な線量設計を行うことができ、患者さん一人ひとりの状況に応じた、より慎重で精度の高い放射線治療につながります。



