放射線治療について

放射線治療について

放射線のがん細胞への影響

放射線は目に見えず、照射されても痛みや痒みなどを感じることは一切ありませんが、体内の細胞レベルでは損傷を与えています。がん細胞に放射線が照射されるとDNAが切断され、それによってがん細胞は分裂・増殖する能力を失い徐々に縮小していきます。DNAの切断はがん細胞の周囲にある正常細胞でも起こりますが、正常細胞はがん細胞よりも修復する能力が高いため、損傷の程度は比較的軽度です。放射線治療ではこれらの修復能力の差を利用し、一般的には放射線照射を複数回に分けた分割照射が行われます。それにより周りの正常細胞への影響を最小限に保ちながら、がん細胞の制御に十分な線量の放射線を照射することができます。
放射線照射によるDNA切断
分割照射によるがん細胞と正常細胞の反応

がん細胞の再酸素化

がん細胞は腫瘍内に作られた血管から酸素を取り込みますが、一部には十分に酸素が行き届かない領域(低酸素領域)が存在します。放射線は酸素が豊富な環境下で高い細胞の死滅効果を示すため、放射線照射により酸素濃度の高い領域から細胞が死滅していきます。ここで、放射線照射を複数回に分けた分割照射を行うと、低酸素領域の細胞に酸素が行き届くようになり、次第に酸素濃度の高い状態に変化します。このメカニズムを分割照射による再酸素化といい、これを繰り返すことで効果的に腫瘍を縮小させることができます。
分割照射によるがん細胞の再酸素化

当院が目指す高精度放射線治療

放射線をがん細胞だけに限局して照射することができれば、正常細胞への影響(有害事象)を考慮する必要のない理想的な治療が可能です。しかし、現実的には正常細胞に全く放射線を照射せずに治療することはできないため、前述のがん細胞と正常細胞の修復能力の違いや分割照射による再酸素化を生かし、複数回に分けて少しずつ照射することになります。また、従来の放射線治療では腫瘍周囲の正常細胞を大きく含んで広範囲に照射していたため、治療による有害事象を軽減させるためにもより多くの分割回数を設定しなくてはなりませんでした。当クリニックでは最先端の高精度放射線治療の技術を用いて、腫瘍に対してより集中的に照射することで、正常組織への影響を最小限に抑え、比較的短期間で安全性の高い治療を行うことを目指しています。

再発がん治療

「再発がん」とは、手術や抗がん剤、放射線治療などでがん治療を行った後に、完全に治りきらなかったがんが徐々に大きくなって再び現れることをいいます。また、がん細胞がリンパ管や血管に入り込んで、最初のがん(原発巣)とは離れた場所にがんが現れることを転移といいます。

当院では、再発がんや離れた場所に転移したがんに対して、次の治療が困難な場合にも最後まであきらめずピンポイント照射により再発がん治療を積極的に行っています。下図は子宮頸がんと腹部・骨盤リンパ節転移に対して、従来の方法の4門照射による拡大照射(1.8グレイ×28回=50.4グレイ+2グレイ×3回=6グレイ、合計56.4グレイ)を行った後に、腹部リンパ節に再発を認め、再治療が困難になったために当院に紹介された症例です。

青色は放射線照射の50%線量強度、黄色のラインは胃を示していますが、左の図の4門照射では胃にある程度の強度の放射線が照射されています。そこで、当院では放射線照射により障害が出やすい胃に強い放射線が照射されないようにピンポイント照射で再治療(3グレイ×15回=45グレイ)を行いました。

このように、従来の方法では困難であきらめていた再発がんに対して、高精度放射線治療により再照射が可能な場合があります。もちろん、症例によっては再治療が困難な場合もありますのでお問い合わせください。
放射線治療後の再発がんに対するピンポイント再照射の例
(左:従来の拡大照射、右:高精度放射線治療によるピンポイント再照射)