看護部

 

看護師のナラティブコーナー

看護師のナラティブコーナー

ナラティブ(narrative)とは、英語で「説話」「物語」「語り」などを意味し、ここでは医療現場において看護師が経験したことや出来事について語っていただきます。

~ 今、長谷川病院で看護師を続けていることの意味 ~

「看護の基本から」

入職昭和63年 S・H さん

  看護学生の頃、「将来は、外科病棟か手術室に勤務したい」と心の中では思いを膨らませ実習や学習に力を注ぎ学んでいました。

  しかし、実習中に遭遇した出来事から、精神科実習先の当院に就職となりました。それは、術前患者の申し送りを行う場面でのことでした。当時(昭和62年)は、癌の病名告知は積極的には行われていない時代で、受け持ち患者も膵臓癌の告知は受けていらっしゃいませんでした。そのような状況の中、病室から手術室へ移動し、手術室看護師に申し送りをする場面で、患者と同じフロア内で私はカルテを見ながら患者氏名・年齢・病名を読み上げてしまったのです。自分では、ハッとも思わず正確に申し送ることに精一杯でした。後に看護師から指導を受け、ようやく気付くことが出来たのです。それを機に教諭から「患者のおかれている状況・思いをもっと考えなさい。自分が行なうことだけを優先せず、人の気持ちを汲むことから看護を始めなさい。外科的な技術獲得の前に看護を考えて欲しい。そのためにはまず、精神科に勤めてみてはどうですか、何科でもそれは重要な基礎だよ。」とアドバイスされました。

  そして、当時の看護部長との面接で、「外科・内科の技術はいつからでもできるよ。精神科だからと身体面の看護技術がないわけではない。むしろ精神状態が悪く身体の不調を適切に訴えられない人達が多い。合併症のある方も多く、看護師としての能力がかなり必要だよ。食事が摂れず点滴が必要・自傷での外傷処置・採血・心電図も分かるようにならないといけないよ。」と助言され、様々な技術が精神科でも必要なことも分かり就職を決めました。

このような経路をたどり、精神科での33年が過ぎました。勤務を継続している理由にはいくつかありますが、患者・家族の人生を知り、病気とどのようにうまく付き合いながら楽に人生を送ることが出来るかをチーム医療で考え・支える体制が挙げられ、様々な職種と協同し合える働きやすい環境があると思います。死にたい、消えたい、狙われているなど、辛い気持ちを聴かない日はありません。精神科看護のやりがいを感じながら働き続けている今日この頃です。

「辞めずに仕事を続けられている理由」

入職平成20年 M・A さん

  私は精神保健福祉士になるために、この病院に看護補助として就職しました。しかし先輩看護師と共に患者さんのケアをしていく中で、直接患者さんの力になりたい、その思いが強くなり看護師を目指すことにしました。そして国家試験に受かり、この病院で憧れの先輩と一緒に働きたい、そう思い長谷川病院に再就職しました。

現在、看護師として約10年長谷川病院で勤務していますが、辞めたいと思うこともありました。

  それは6年目時でしたが、自分の受け持ち患者さんの自死がありました。突然の出来事で、なかなか受け入れることが出来ず、何故と言う思い、自分の不甲斐なさ、やるせなさ、何か出来ることはなかったのかという後悔、自分を頼ってくれなかったのかと思う虚しさや、看護師としての力不足を思う怒りや悲しみ、そんな感情が渦巻いて、この仕事に対して無力感を感じてしまいました。はたして自分は、精神科看護師をやっていていいのだろうかと思い、本気で転職を考えました。そんな時に私の支えとなってくれたのが同期でした。自分の中に渦巻いていた感情聞いてもらい、同期自身の似たような体験も聞きました。そして「今回の経験を他の患者さんに活かすことはできないか。」「同じような経験をした仲間を支えられるようになろう。」とまだもう少し頑張ってみよう、この同期たちと一緒にこの病院で働いていきたい、そう思えるようになっていきました。今では同期も少なくなってしまいましたが、私にとっての同期は、ともに成長しあう仲間であり、大きな存在です。

  また、正直なところ、仕事に飽きてしまった時期もあります。初めのころは、その責任の重さと仕事の複雑さから目の前にある業務をこなす事で手一杯でしたが、段々と業務になれてきて普段の業務に飽きを感じてしまいました。そんな中で何か新しいことをしたいと思って始めたのが実習指導でした。今振り返れば不純な動機だと思います。いざ始めてみると理解していたと思ったことが理解できておらず、自分の勉強不足を痛感し、学生さんからの評価もボロボロでした。それでも指導を続けていくうちに、面白さを感じるようになり、そしてある時に日本看護協会主催の指導者研修に参加させていただくことができました。そこで指導、教育とは何かを学ばせていただきことができ、さらに面白さを感じることが出来るようになりました。現在は後輩の指導者に、この面白さを知ってもらおうと奮闘しています。私にとって同期の存在、実習指導、これが同じ病院に10年務められている大きな理由です。

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