肺血栓塞栓症の診断と治療
肺血栓塞栓症とは
肺血栓塞栓症とは足の静脈に血液のドロドロ(深部静脈血栓症)が湧いて、それが静脈を伝って飛び、肺の血管を詰まらせてしまう病気です。これにより息が苦しくなったり、胸の痛みが生じます。ひどい場合は突然意識を失って倒れたり、お亡くなりになってしまう場合もあります。
なぜ血栓が出来る?
血栓は様々な原因によって起こります。最も多い原因は長時間の安静状態を保つことによって、足の静脈の流れが悪くなってしまうことです。典型的には、飛行機などの狭い席で足を動かさずにずっと座りっぱなしでいることで肺血栓塞栓症を起こします(エコノミー症候群)。運転による長時間座位や避難所での長時間同一姿勢によって発症することもあります。
その他に、脱水や血液が固まりやすい体質(血栓性素因)などによって発症する場合もあります。体調を崩して入院している時に、ベッドの上で臥床することが長いと起きる場合もあります。
肺血栓塞栓症の診断
最も診断に有用な検査は造影CT検査です。造影剤というお薬を点滴で投与することにより、血管や体の中の構造物をより強調して描出しながらCT撮影を行います。これにより、肺の血管や、足の血管にどれほどの血栓があるのかわかります。その他に、採血検査にて血液のドロドロが出来ていないかチェックしたり(FDPやD-dimerという採血項目)、心臓の超音波や心電図で肺の血流に負荷(右心負荷)がかかっていないか調べます。
肺血栓塞栓症の治療
血栓を溶かしたり、血栓がこれ以上肺の血管に飛んで詰まらせないようにする必要があります。血栓を溶かす治療(抗凝固療法もしくは血栓溶解療法)は、点滴やDOACと呼ばれる内服薬が一般的となっています。
既に肺に大きな血栓が詰まっている上に、さらに飛ぶと危険な深部静脈血栓がある場合は、血栓が肺に飛んでいかないようにキャッチするフィルターを下大静脈に留置します。下大静脈フィルターは緊急避難的処置であり、抗凝固療法で血栓の改善が見込まれれば、通常は抜去します。
肺血栓塞栓症の長期的展望
肺血栓塞栓症が起こった原因が安静や臥床によるものであれば、なるべく動くようにしてもらい、抗凝固療法を行い、血栓が溶ければ、お薬を一旦中止することを検討出来ます。血栓性素因があったり、安静や臥床が必要な状態が続く場合は、また血栓が出来るといけないので、内服治療の継続が必要になることがあります。