高血圧の診断と治療
高血圧はサイレントキラー
血圧は極端に上昇しない限り、多くの場合、強い症状を引き起こしません。しかし、長期にわたって高血圧を放置すると、身体の臓器に様々な障害を引き起こします。全身の動脈硬化を引き起こし、脳卒中、心筋梗塞、心不全、不整脈、大動脈解離、腎不全などを発症させます。静かに病気が進行し、気づいた時には命に関わる恐ろしい状態になってしまいます。
そもそも高血圧とは?
心臓はポンプの役割を果たしていて、全身に血液を送り、酸素や栄養を届けています。様々な理由により、この血流の圧が上がること(140/90mmHg以上)を高血圧と呼び、圧の上昇により血管を傷つけたり、心臓の筋肉に負担がかかったりしてしまいます。
高血圧の原因
日本人の高血圧に最も多い原因には食事から摂る塩分の量が多いことが考えられています。摂取する塩分が多くなると、体内に水分が引き込まれやすくなったり、体の中のナトリウムやカリウムなどの電解質を整えるホルモンのバランスが悪くなったりします。両親から遺伝により血圧が高くなりやすい方もいます。また、喫煙や肥満、運動不足、睡眠不足やストレスなども原因となります。生活習慣の問題の他には、副腎や交感神経などのホルモン分泌の異常により高血圧が起こる場合もあります。
高血圧の治療
生活習慣の改善、薬物治療、合併症の管理が高血圧治療の大きな柱となります。
普段の生活で気をつけて頂きたいのが、塩分を取りすぎないようにすることと、程よい運動を習慣とすることです。特に日本人は醤油、塩、味噌などの嗜好があるため、塩分の摂取量が多いと言われています。禁煙や体重管理も大切です。
薬物治療には血管を広げるお薬(カルシウム拮抗薬)、ホルモンバランスを整えるお薬(レニン・アンギオテンシン系阻害薬)、塩分をおしっこにより排泄するお薬(サイアザイド系利尿薬)などが主体となります。
動脈硬化が進行すると、長年使った水道のパイプ詰まりのように、プラークと呼ばれる動脈硬化の垢が血管の壁に溜まってしまいます。これが血流の低下を引き起こし、脳や心臓に障害を来してしまうような時は血行を改善させる治療が必要になることがあります。
高血圧の方には糖尿病やコレステロール・中性脂肪の異常(脂質異常症)が合併していることが多く、動脈硬化を起こらないようにするために合わせて治療が必要になることがあります。
意外と多い合併症が、肥満の高血圧の方にみられる睡眠時無呼吸症候群です。人間は、夜寝ているときに体を休めなければいけませんが、この時に自律神経のうちの副交感神経が活発になります。睡眠中にいびきが強かったり、呼吸が一時的に止まったりすることを繰り返すと、もう一つの自律神経である交感神経が活発になってしまい、この神経の乱れが血圧を上昇させます。必要によって、無呼吸を改善させる空気を送るマスクの治療(CPAP)を行います。
難治性高血圧
通常、高血圧には様々な原因が背景にあり、それらを把握し、適切な対処が必要となります。それでも、目標値まで血圧が下がりきらないことも実際にはよくあり、今までのお薬の最適化や更なる一手(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、β遮断薬)など考慮する必要があります。